こんにちは、ヴェリ歯科クリニック院長の田島です。
顎の痛み、噛み合わせの不調によって頭痛がおこる場合があります。
実はこめかみ周辺にある筋肉は私たちのものを食べたり顎を動かしたりするのに重要な役割を持っています。
今回はこめかみ周辺にある筋肉についてとそのマッサージ法をご紹介します。
側頭筋
こめかみやその上部に放射状に広がっている筋肉のことを側頭筋と呼びます。側頭筋は英語でtemporal muscle とよばれていてここでいうtemporal という言葉、どこかで聞いたことはないでしょうか。
ボクシングや格闘技などで使われているテンプル(こめかみ)という言葉と同じ意味ですね。
実際にtemporalはこめかみというより側頭部(頭の横側)を指しているようです。temporalはこめかみ以外に『時の』時間的な意味合いを持っていますが、こめかみと同じ語源なのには脈を打つところ(こめかみ部)が時を打つのに似ているとか、最初に白髪が出始めるところ=時に関係など。
諸説ありますが、上部は頭のサイド(側頭部)まで広がっていますが、下部は顎の関節や下顎骨と繋がっているのです。
側頭筋の痛みはいろいろ
側頭筋の周りには目、耳、顎関節などいろいろな神経や臓器が密集しています。側頭筋の痛みが眼精疲労に繋がったり、耳症状、頭痛として症状が出る場合もあります。
歯科分野では顎関節に異常が起こりやすいです。
咀嚼筋である側頭筋
側頭筋は普段ものを食べたり顎を動かす主要な筋肉、咀嚼筋に含まれています。前回咬筋のお話をしましたが、咬筋に続いてものを噛んだり、口を閉じるための筋肉(閉口筋)として働きます。
閉口筋である側頭筋は実際に触れるて感じることもできます。
- こめかみあたりを4本の指で触ってください。
- 触った状態で奥歯をグッ、グッと噛み締めてください。
- 嚙み締めるたびに筋肉が張ることが感じましたか。
側頭部は骨と皮膚の距離が非常に近いので簡単に筋肉を感じることができますね。
顎を横へ
側頭筋の働きは顎を閉じる閉口筋の役割以外にも顎を横にずらす時にも機能します。右に顎を移動させる時は右側の側頭筋が、左に移動させる場合は左の側頭筋が機能します。
顎を後ろへ
顎を後ろへ移動させる時には側頭筋の後部が働きます。後部が収縮することで顎を後ろへ移動させます。
側頭筋の診査
顎がズレていたり、顎関節症だったりした場合咬筋と同様に側頭筋でも痛みが出ることがあります。これはねじれた噛み合わせを補正するように筋肉が緊張してバランスを保つためです。
そのため筋肉を押した時にどちらかの側頭筋にコリが現れます。
側頭筋はすぐに触れることができるので診査する指の圧も強くしてはいけません。指圧は1kg(800~1200g)を目安にします。
側頭筋は大きく分けて前方部、中央部、後方部にかけて診査します。
前方から順に触り痛みがないか確認をしていきます。
側頭筋マッサージ
側頭筋マッサージも咬筋マッサージ同様に指で押しただけで痛みが出る場合は無理にマッサージを行うことをやめてください。強いマッサージで痛みを誘発することになってしまうので危険です。
マッサージする力もあまりかけすぎずに指の腹を使って行います。それでは始めましょう。
- 左の側頭筋をマッサージする場合は右手を使い、右の側頭筋をマッサージする場合は左手を使います。まず左側からやってみましょう。
- 手のひらは軽く広げて指と指に少し隙間ができるようにします。
- 右手の平を左の側頭部、耳の上前方部に持って行きます。右手の薬指がこめかみに当たるよう調整します。
- 右の指が左側頭部にあたった位置で首を軽く右に倒します。
- 指の腹を使ってゆっくりと頭頂部へスライドさせながら指圧します。指を立てるようにすると指圧力が強くなります。
- 耳の前方部が終わったら今度は耳の上中央部で同じことをします。
- 中央の次は耳の後方部で行い左側が終了です。同じことを右側でやってみましょう。
いかがでしたでしょうか。首を軽く曲げることで首回りの筋肉、胸鎖乳突筋のストレッチも意識して行うとより効果的です。
また血行が良くなっている時に行うことで血流がたくさん流れるので、お風呂あがりや、あったかい蒸しタオルで側頭筋を温めた後に行うとよりスッキリします。
まとめ
側頭筋について少しご理解いただけたでしょうか。頭のサイドにある筋肉が実は下顎骨や顎関節と繋がっていて咀嚼運動に関与しています。
以前お話ししたように下顎骨は頭蓋骨とは繋がっていなくシャンデリアのように筋肉にぶら下がって維持しています。側頭筋は下顎骨と頭蓋骨を結ぶシャンデリアの中でも主要な鎖の一つではないでしょうか。
側頭筋をマッサージすることで頭がリフレッシュしたり血行がよくなることはありますが、顎関節症が治ることはありません。噛み合わせのずれや顎のずれを治さないと筋肉症状が軽減しない場合もあります。
マッサージをする前に痛みが顕著に出た方や慢性的に凝っている方、あなたの噛み合わせは正しいですか。