ヴェリ歯科クリニック
巣鴨駅から徒歩2分 一般歯科・矯正歯科

他院で抜歯と診断された方へ

ホーム » 他院で抜歯と診断された方へ

【歯を抜かない治療】エクストルージョンとクラウンレングス|抜歯と言われた歯を残す方法を歯科医師が解説

「その歯は、もう抜くしかありませんね」——そう言われて、胸がざわついたまま帰ってきた。この記事にたどり着いた方の多くが、そんな経験をされているのではないでしょうか。

でも、どうか一度立ち止まってみてください。歯が割れて抜歯と診断された方、虫歯が大きく歯が崩れてしまった方でも、諦めるのはまだ早いかもしれません。歯ぐきの下に隠れた健康な部分を上手に活かすことで、残せる場合があるからです。

その代表的な方法が エクストルージョン(矯正的挺出)クラウンレングス(歯冠長延長術) の2つ。この記事では「自分の歯にはどちらが向いているのか」を中心に、歯科医師ができるだけやさしく解説します。

Print

「もう抜くしかない」と言われても、あきらめないでほしい理由

エクストルージョンやクラウンレングスという治療名は、すでにご存じかもしれません。でも「自分の歯には、どちらが向いているの?」——そこで迷ってこのページにたどり着いた方が多いのではないでしょうか。

歯が割れてしまった、あるいは虫歯が深くて「もう抜くしかない」と言われた歯でも、残せる場合があります。この記事は、2つのうちどちらが自分に向いているかを見極めたい方のための内容です。むずかしい前置きは後半にまとめました。まずは本題の「どっちが向いてる?」の比較から読んでいただいてかまいません。

こんなお悩みはありませんか?

次のようなことで悩んでいる方に、この記事はきっとお役に立てます。

  • 他院で「この歯は抜くしかない」と言われ、納得できないまま帰ってきた
  • 歯が割れて(破折して)、抜歯と診断された
  • 虫歯が大きく、歯が崩れて歯ぐきの下まで進んでいると言われた
  • 「差し歯(被せ物)を作る土台が足りない」と言われた
  • すぐにインプラントをすすめられたが、まず自分の歯を残せないか知りたい

ひとつでも当てはまるなら、抜歯を決める前に、残せる可能性があるかどうかを確かめてみる価値があります。

まずは、気軽にご相談ください

「抜歯」と言われた歯を、実際にお口の中とレントゲンで診察させていただき、残せる可能性があるかどうかを診断します。悩みを抱え込む前に、もうひとつの選択肢を聞きに来る——そんな気持ちでいらしていただければ十分です。


クラウンレングス(歯冠長延長術)とは|深い虫歯を抜かずに残す

クラウンレングス(歯冠長延長術)とは、歯ぐきや、その下にある骨の形を外科的に少し整えて、歯ぐきの上に出ている歯の部分(臨床歯冠)を延ばす治療です。専門的には「APF(歯肉弁根尖側移動術)」とも呼ばれます。

クラウンレングスが必要になるのはどんなとき?

虫歯が大きく歯ぐきの下まで達してしまったとき、あるいは歯が割れて、その割れ目が歯ぐきの下にもぐってしまったとき。こうした歯は、従来なら「もう抜くしかない」と診断されることも少なくありませんでした。

その理由は、歯ぐきの下がだ液や浸出液で常に湿り、感染物にさらされた環境で、ぴったり合う被せ物を作れないからです。ここで覆いかぶさった歯ぐきを取り除き、必要なら骨の形も少し整えて、健康な歯を歯ぐきの上に出してあげることで、「残せない」と判断された歯でも、しっかり固定できる被せ物を入れられるようになります。

レングス.001

治療の流れ(クラウンレングス)

  1. 診断・検査

    レントゲンと歯周ポケットの測定(プロービング)で、骨の位置や歯ぐきの状態を確認し、どこまで整えれば良いかを見極めます。

  2. 施術(局所麻酔・約45〜90分)

    局所麻酔をして、覆いかぶさった歯ぐきを切除し、必要に応じて骨の形も少し整えます。麻酔が効いているので、処置中の痛みはほとんどありません。

  3. 縫合・抜糸

    整えた部分を糸で縫い、およそ2週間後に抜糸をして、治り具合を確認します。

  4. 型取り・被せ物

    歯ぐきが落ち着いてから型を取り、被せ物をセットします。土台がしっかりしているので、ぴったり合う被せ物を作りやすくなります。

通院回数・期間の目安

検査・施術・抜糸・型取り・セットで、おおむね4回ほどの通院。手術そのものは1回で、治療の区切りは1ヶ月以内につくことが多い治療です。「できるだけ短い期間で終えたい」という方に向いています。

クラウンレングスのメリット

  • 抜歯と言われた歯を、残せる可能性が高まります。
  • 被せ物(クラウン)の適合が良くなり、すき間からの再治療リスクを下げられます。
  • 比較的短期間(1ヶ月以内)で被せ物まで進められます。
注意! クラウンレングスのデメリット・注意点
  • 外科処置のため、術後1〜2日は軽い腫れや違和感が出ることがあります。
  • 歯ぐきを下げるのは2〜3mm程度が限界です。それより深い場合はエクストルージョンが向きます。
  • 歯ぐきの位置が下がるため、物が詰まりやすくなることがあります。
  • 前歯では、歯と歯の間にすき間(ブラックトライアングル=黒い三角の影)が見えることがあります。
  • 骨を少し削るため、将来インプラントを検討する場合の設計に影響することがあります。
  • すべての歯がクラウンレングスで保存できるわけではありません。
クラウンレングスは、こんな方に向いています
  • 虫歯や割れが歯ぐきの少し下(2〜3mm程度まで)にある奥歯を残したい方
  • できるだけ短い期間(1ヶ月以内)で被せ物まで進めたい方
  • 矯正の力でゆっくり待つより、外科処置で一度に整えたい方

エクストルージョン(矯正的挺出)とは|歯を引き上げて残す

エクストルージョン(矯正的挺出・歯根挺出法)とは、歯ぐきの中に埋もれてしまった歯にフックを付け、矯正用のゴムやバネで少しずつ引き上げて、健康な歯質を歯ぐきの上に露出させる治療です。ちょうど釣り竿で魚をそっと引き上げるようなイメージです。

引き上げて露出する面積が増えると、歯を抱え込むように被せ物を作れるため、取れにくく、長持ちしやすい土台になります。しかも、クラウンレングスと違って骨を削らずに済むのが大きな利点です。

エクストルージョンでできること(活用のしかた)

① 抜歯するしかない状態の歯を残す

重度の虫歯や、歯が割れて歯ぐきより上の部分がほとんど失われたケースでも、その下に健康な部分が残っていれば、それを歯ぐきの上に引き出すことで、抜歯を避けられる場合があります。たとえば神経を抜いた歯は痛みを感じにくいため、気づかないうちに虫歯が歯を支える骨の中まで進んでいることがあります。他院では「抜歯してインプラントに」とすすめられがちなこうしたケースでも、エクストルージョンで少しずつ引き上げ、歯ぐきの環境を整えてから最終的な被せ物を作ることで、ご自身の歯を残せることがあります。

② 割れにくくするための「フェルール」を確保する

歯に被せ物をかぶせるとき、土台として接する健康な歯(象牙質)の部分をフェルールと呼びます。このフェルールが大きいほど、歯にかかる力が分散され、割れにくくなります。エクストルージョンで埋もれた部分を引き上げれば、この大切な「土台のふち」を十分に確保できます。

③ 見た目(審美性)を整える

歯ぐきが目立って「口を開けて笑いにくい」といったお悩みに対して、歯ぐきのライン(ガムライン)を整え、歯の長さや形をそろえて、見た目を整える目的にも応用できます。

④ 骨の量を増やして、良好なインプラントにつなげる

どうしても抜歯が必要な場合でも、いきなり抜くのではなくエクストルージョンで少し引き上げてから抜くと、周りの骨(歯槽骨)や歯ぐきが盛り上がってきます。これにより、抜歯後のインプラント治療を、より審美的に行いやすくなります。

治療の流れ(エクストルージョン)

  1. 根の治療をする

    まず根の治療をしっかり行います。ここが不十分だと、引き上げたあとに痛みが出ることがあるためです。

  2. 牽引装置を装着する

    根にフックを埋め込み、引っ張っている間に虫歯にならないよう表面をコーティングします。両隣の歯に牽引装置を接着して固定します。

  3. フックとワイヤーをゴムでつなぐ

    矯正用のゴムでフックと装置をつなぎます。反対側の歯に装置が当たらないよう調整し、治療中は仮歯を入れるので、日常の見た目に支障はありません。

  4. ゴムの力で少しずつ引き上げる

    2〜4週間ごとに来院してゴムを交換し、根をゆっくり引き上げていきます。常に一定の力がかかり続けるよう調整するため、定期的な通院が必要です。

  5. 歯ぐきを整えて、被せ物で仕上げる

    引き上げたあと、必要に応じて歯ぐきの形を整え、最終的に被せ物で修復します。

通院回数・期間の目安

どこまで引き上げたいかによって変わりますが、治療期間は1〜3ヶ月ほどの方が多いです。ゴムで引っ張る期間は2〜4ヶ月が目安となることもあり、2〜4週間おきの調整が必要になります。

エクストルージョンが向いている歯・向きにくい歯

  • 向いている:前歯・小臼歯/2〜3mmを超えて深い虫歯・破折/根が1〜2本の歯。
注意! 向きにくいケース・デメリット
  • 根が3本あるなど複雑な形の歯や、2本以上を同時に引き上げる場合は、適応が難しくなります。
  • 両隣の歯がグラグラしていたり、大きな虫歯があったり、歯周病がかなり進んでいると、装置をしっかり固定できず難しいことがあります。
  • 両サイドに差し歯(被せ物)がある歯は、装置が外れやすいことがあります。
  • 引き上げすぎて歯冠歯根比が悪くなると、外れやすくなる可能性があります。
  • 歯の根を引っ張るため根が短くなり、人によっては歯が割れやすくなる可能性があります。
  • 治療期間中に、装置が外れたりゴムが取れたりすることがあります。
  • クラウンレングスと比べて治療期間が長くなります。
引き上げた後の「後処置」について(追加費用はいただきません)

ゴムやバネで引き上げると、歯ぐきの繊維が元に戻ろうとして歯を引き戻すことがあります。これを防ぐため、引き上げた後に歯ぐきの繊維を切る処置を行うことがあります。また、引き上げによって歯ぐきが厚くなった場合も、同じように形を整えます。いずれも麻酔をして行うので痛みはほとんどなく、これらの後処置に追加費用はいただきません。安心して治療に専念していただけます。

エクストルージョンは、こんな方に向いています
  • 前歯や小臼歯で、虫歯や割れが歯ぐきの深く(2〜3mmを超えて)進んでいる方
  • 骨を削りたくない方、将来インプラントの可能性も残しておきたい方
  • 前歯の見た目(歯ぐきのライン)をなるべく損ないたくない方
  • 多少時間がかかっても、自分の歯を残すことを優先したい方

あなたの歯はどっち?クラウンレングスとエクストルージョンの選び方

エプロンをした女性 他院で抜歯と診断された方へ当院が行う歯を残す3つの治療法

ここまで読んで、「結局、自分の歯にはエクストルージョンとクラウンレングスニングどちらが向いているの?」に対してお答えします。

先に結論(選び方の目安)
  • 前歯・小臼歯で、虫歯や破折が2〜3mmより深いエクストルージョンが有利
  • 大臼歯などの奥歯で、歯ぐきの下2〜3mm程度までクラウンレングスが有利
  • できるだけ早く終わらせたい(1ヶ月以内)→ クラウンレングス
  • 骨を削りたくない/将来インプラントの可能性を残したい → エクストルージョン

ひと目でわかる比較表

比較項目クラウンレングス
(歯冠長延長術・APF)
エクストルージョン
(矯正的挺出)
向いている歯大臼歯などの奥歯前歯・小臼歯
適応の目安歯ぐきの下 2〜3mm程度まで2〜3mmを超える深い虫歯・破折
骨を削るか削る(将来のインプラント設計に影響することも)削らない
治療期間の目安1ヶ月以内1〜3ヶ月
通院回数の目安約4回(施術・抜糸・型取り・セット)ゴム交換のため数回(2〜4週ごと)
主なリスク・
デメリット
歯ぐきが下がる/知覚過敏/骨削除でインプラントに影響装置が外れることがある/根が短くなる/後処置が必要な場合がある
後処置の追加費用歯ぐきの繊維切除・形態修正は追加費用なし

※効果や適応には個人差があります。上記はあくまで一般的な目安で、実際の診断で最適な方法は変わります。

もう少し詳しく:選び分けの考え方

「深さ」で分かれる:2〜3mmがひとつの目安

クラウンレングスは、歯ぐきや骨を下げて健康な歯を出す治療ですが、下げられる量には限界があり、目安は2〜3mm程度です。これ以上深いところに虫歯や割れがある場合に無理に下げると、歯ぐきや骨を削りすぎてしまいます。そのため、2〜3mmを超える深い虫歯には、歯そのものを引き上げるエクストルージョンの方が有利になります。

「歯の場所」で分かれる:奥歯か、前歯・小臼歯か

大臼歯などの奥歯は、装置を付けにくく、また短期間で終えたいニーズも多いため、クラウンレングスが向いています。一方で前歯や小臼歯は、見た目に関わる歯ぐきのラインを整えやすく、骨を温存できるエクストルージョンが向いています。前歯でクラウンレングスを行うと、前述のブラックトライアングル(黒い三角の影)が出やすい点も、前歯でエクストルージョンが選ばれやすい理由のひとつです。

「期間」で分かれる:早さ重視ならクラウンレングス

とにかく早く被せ物まで進めたい方には、1ヶ月以内で区切りがつくクラウンレングスが向いています。エクストルージョンは、歯をゆっくり引き上げる性質上どうしても1〜3ヶ月ほどかかりますが、そのぶん骨を削らずに済むという利点があります。

「将来のインプラント」を見据えるなら

クラウンレングスは骨を少し削るため、万一その歯を将来失ってインプラントにする場合の設計に影響することがあります。「今は残したいけれど、将来の可能性も残しておきたい」という方には、骨を温存できるエクストルージョンが向くことがあります。

そもそも「残せるか」は、健康な歯の“壁”で決まります

エクストルージョンかクラウンレングスかを考える前に、まず大前提となる考え方があります。それは「被せ物をしっかり支えられる健康な歯が、どれだけ残っているか」です。ここを患者さんにもわかるように、少し詳しくご説明します。

「フェルール」=被せ物が”つかまる”健康な歯の輪っか

被せ物(クラウン)は、健康な歯を輪のように抱え込むことで、外れにくく・割れにくくなります。この抱え込む部分をフェルールと呼びます。一般的には、虫歯や古い詰め物をすべて取り除いたうえで、歯ぐきの上に高さ1.5〜2mm・厚み1mm以上の健康な歯が輪っか状に残っていることが、ひとつの目安とされています。

研究でも、この輪っか(フェルール)が全周にあるほど歯は割れにくいとされています。ただし「全周そろっていない=すぐ抜歯」ではありません。部分的にでも健康な壁が残っていれば、無い場合より有利になります。だからこそ、”どこがどれだけ残っているか”を見極めることが大切なのです。

残っている「壁の数」と「面」で考える

歯を囲む健康な壁が、いくつ・どの面に残っているか。これが残せるかどうかの分かれ目になります。目安を整理すると次のとおりです。

残っている健康な歯(壁)の状態考え方の目安
ほとんど残っていない
(全周でフェルールなし)
そのまま被せても長持ちしにくい。根の治療の前に、エクストルージョンやクラウンレングスで健康な歯を歯ぐきの上に出すことを検討します。
壁が1つだけ残る基本的にエクストルージョン・クラウンレングスの対象になります。
壁が2つ残る「どの面が残るか」を確認します。とくに頬側・舌側(歯の内外の面)が残っていると力に強く、残せる可能性が高まります。
前後(近遠心)だけ欠けている頬側・舌側の壁が残り、出血やだ液を抑えた処置(防湿)と型取りが成立するなら、保存的に検討できます。
頬側または舌側が大きく欠けている横方向の力に弱くなるため、残せるかどうかは慎重に判断します。

※これは考え方の目安です。実際の可否はレントゲンや診察による総合的な判断になります。

「どの面が残っているか」が大事な理由(力の向き)

壁は「数」だけでなく「どの面にあるか」が重要です。歯は場所によって受ける力の向きが違うからです。奥歯は主に縦方向の力を受けるため、頬側・舌側の支えがあるかがカギになります。上の前歯は裏側(口蓋側)から、下の前歯は表側(唇側)から力を受けやすいので、その面に健康な壁が残っているかが大切です。「力を受け止める面に健康な歯が残っているか」——ここを見て、残せるか・どちらの方法が向くかを判断します。

エクストルージョンとクラウンレングス、専門的にはこう選び分けます

ここまでの考え方をふまえると、2つの治療の選び分けは次のように整理できます。

  • エクストルージョンを優先しやすいのは……前歯など見た目が大切な部位、隣の歯の骨の高さや歯ぐきのラインを崩したくない場合。骨を削らずに済むため、審美性と周りの組織を守りやすいのが理由です。
  • クラウンレングスを選びやすいのは……奥歯で見た目への影響が少なく、歯ぐきや骨に余裕があり、短期間で対応したい場合。1ヶ月以内で被せ物まで進めやすいのが理由です。

たとえば、こんなケースで考えてみましょう

実際にどう選ぶのか、イメージしやすいように、代表的な状況を挙げてみます(あくまで一般的な例で、実際の判断は診断によります)。

ケース1:前歯が根元近くで折れてしまった

前歯は見た目が大切で、深く折れていることも多い部位です。骨を削って歯ぐきを下げるより、歯そのものを引き上げるエクストルージョンで健康な歯を出し、歯ぐきのラインを整える方が向いていることが多いケースです。

ケース2:奥歯(大臼歯)の虫歯が歯ぐきの少し下まで進んだ

奥歯で、虫歯が歯ぐきの下2〜3mm程度にとどまっている場合は、クラウンレングスで歯ぐきと骨を少し整えれば、短期間で被せ物まで進められることが多いケースです。

ケース3:神経を抜いた歯の虫歯が、気づかないうちに深く進んでいた

痛みが出にくいために深く進行していることがあります。深さが2〜3mmを超えるなら、エクストルージョンで少しずつ引き上げて健康な歯質を出し、割れにくい土台(フェルール)を確保してから被せ物へ進みます。

「歯が割れた・折れた」歯は残せる?

割れ(破折)の場合、残せるかどうかは割れ目がどこまで達しているかが大きなポイントです。割れ目が歯ぐきの少し下までなら、クラウンレングスやエクストルージョンで割れ目を歯ぐきの上に出して残せることがあります。一方で、割れが根の深く(縦に真っ二つなど)まで及んでいる場合は、残念ながら残すのが難しいこともあります。まずはレントゲンなどで割れの範囲を確認することが第一歩です。

注意! こんな場合は「残す」のが難しいことも

エクストルージョンもクラウンレングスも万能ではありません。次のような場合は、無理に残しても早い時期に再発したり、割れたりする恐れがあります。

  • どちらの方法でも、引き上げ・切除の結果として歯冠歯根比が悪くなりすぎる(歯ぐきの上の部分が長く、支える根が短くなりすぎる)
  • もともと歯の根が短すぎる
  • 深いクラック(ひび)がある、または根が縦に割れている(垂直歯根破折)疑いがある
  • 根に穴(穿孔)があいている、または歯周組織(歯ぐき・骨)の問題が大きい

こうしたケースでは、残すことにこだわりすぎず、抜歯後の選択肢も含めて正直にご説明します。大切なのは「長く快適に噛める」ことだからです。

大切なのは「あなたの歯の状態」に合わせること

同じ「深い虫歯」でも、深さ・歯の位置・残っている根の長さ・隣の歯の状態によって、最適な方法は一人ひとり変わります。どちらか一方に決めつけず、まずは診察でお口の中とレントゲンを確認させてください。場合によっては、根の治療と組み合わせて残す道が見つかることもあります。


歯科用顕微鏡でまずは残せる歯へ

Print私たち歯医者が裸眼で歯を治療する場合と比べ歯科用顕微鏡を使う事で20倍以上視野が拡大されます。見えなかった虫歯や歯の割れ目(クラック)も発見しやすくなります。歯の神経治療をラバーダムなしマイクロスコープなしで行いまた限られた時間内で治療します。しかしこのような治療は残念なことに50%以上の歯に何らかの再感染が起こり再治療が必要になります。

マイクロスコープを使った精密な根の治療(根管治療)は、当院でも保険診察で標準的に行っています。最後に詰めるお薬充填材に特殊なセメント(MTAセメント、バイオセラミックセメントを選択される場合は保険外診察になります。(66000円税込) また難しいケースは、根管治療を専門とする歯科医師との連携(チーム医療)で対応します。なお、治療の途中でどうしても歯を残せないと判断した場合、根管治療の費用はいただきません。

根管治療の詳しい内容は、こちらのページでご紹介しています。


治療費用について

それぞれの治療費用の目安は次のとおりです。いずれも税込表示です。被せ物や土台の費用は別途かかります。

治療費用(税込)備考
クラウンレングス(歯冠長延長術)55,000円別途、土台・被せ物の費用がかかります。
エクストルージョン(矯正的挺出)165,000円別途、調整料 1ヶ月に1度 5,500円(税込)。引き上げ後の歯ぐきの後処置は追加費用なし。
精密根管治療(マイクロスコープ)66,000円1歯あたり。何度通っても同額。残せないと判断した場合はいただきません。

※上記は自由診療(保険適用外)の費用です。金額は変更になる場合があります。詳しくは診察時にご説明します。

費用について、あらかじめ知っておいていただきたいこと

歯を残す治療では、上の費用に加えて、土台や被せ物の費用が別途かかります。最終的な総額は、選ぶ被せ物の種類によって変わります。診察のうえで、想定される総額とその内訳を、治療を始める前にご説明します。「あとから思っていたより高くなった」ということがないよう、見通しをはっきりお伝えすることを大切にしています。


【補足】なぜ歯は「抜歯」と診断されるのか|歯ぐきの下に潜む問題

虫歯や割れ(クラック・破折)が歯ぐきの上に見えている範囲にとどまっていれば、多くは削って詰める・被せることで対応できます。問題になるのは、その虫歯や割れが歯ぐきの下(歯肉縁下)まで進んでしまったときです。

虫歯や破折で歯ぐきの近くまで大きく崩れた歯の例(抜歯を回避して残す治療の対象となるケース)

歯ぐきの下は「治療が届きにくい」場所

歯ぐきの下は、だ液や歯ぐきからしみ出る液(浸出液)で常に湿っていて、細菌をはじめとする感染物にさらされている環境です。この状態のまま詰め物や被せ物の型を取ろうとしても、歯ぐきがかぶさってきたり、出血やだ液に邪魔されたりして、ぴったり合う型が取れません。

その結果できあがるのは、すき間のある被せ物です。無理に入れても、そのすき間からまた細菌が入り込み、二次虫歯(治療した歯の再びの虫歯)を招く原因になります。「せっかく治したのに、またすぐダメになる」——この悪循環こそ、歯ぐきの下の虫歯・破折が抜歯と判断されやすい理由です。

「生物学的幅径」という、体のルール

もうひとつ、歯ぐきの下の治療が難しい理由があります。それが生物学的幅径(せいぶつがくてきふくけい/バイオロジックウィズ)という考え方です。少し専門的ですが、歯を残せるかどうかを左右する大切なポイントなので、やさしく説明します。

歯ぐきと歯の境目から、その下の骨のてっぺんまでの間には、歯ぐきが歯にしっかり付着するための一定の”すき間”(おおよそ2〜3mm程度)が体にとって必要だと考えられています。ここは、いわば歯ぐきと歯が健康にくっつくための「専用スペース」です。

もし虫歯や割れがこのスペースに食い込むほど深く進んでいると、その位置に被せ物のふちを置くことになり、体が本来必要としているスペースを奪ってしまいます。すると歯ぐきが慢性的に炎症を起こしたり、腫れや出血が続いたりして、被せ物が長持ちしません。「被せ物のふちを、健康な歯ぐきとケンカしない位置まで引き上げる(または歯ぐき・骨を下げる)」——この体のルールを守るために行うのが、これから紹介するクラウンレングスやエクストルージョンなのです。

ポイント

抜歯の分かれ目は、「歯ぐきの上に、被せ物を支えられるだけの健康な歯が残っているか」です。裏を返せば、歯ぐきの下に隠れた健康な部分を”表に出す”ことができれば、残せる可能性が生まれます。


よくある質問(Q&A)

クラウンレングスとエクストルージョン、どちらが向いているか自分で選べますか?

大まかな目安として、前歯・小臼歯で深い虫歯ならエクストルージョン、奥歯で浅めならクラウンレングスが向きます。ただし最適な方法は歯の状態で変わりますので、最終的には診断のうえで一緒に決めていきましょう。ご希望(早く終えたい・骨を残したい など)もお聞かせください。

手術は痛いですか?

局所麻酔をするため、処置中の痛みはほとんどありません。術後1〜2日は軽い腫れや違和感が出ることがありますが、通常は数日で落ち着きます。エクストルージョンの後処置(歯ぐきの繊維切除など)も麻酔をして行うので、痛みはほとんどありません。

どんな歯でも残せますか?

残念ながら、すべての歯を残せるわけではありません。根の長さ、割れの位置、隣の歯や歯周組織の状態によっては適応外となることもあります。ただ、「他院で抜歯」と言われた歯でも残せる場合はあります。まずは診断で、残せる可能性があるかどうかをご説明します。

「健康な歯がほとんど残っていない」と言われました。もう抜くしかないですか?

健康な歯(フェルール)が全周にそろっていなくても、すぐに抜歯とは限りません。部分的にでも壁が残っていれば残せる可能性がありますし、足りない場合でもエクストルージョンやクラウンレングスで歯ぐきの上に健康な歯を出してから被せる方法があります。まずは「どの面にどれだけ残っているか」を診てからの判断になります。

フェルールとは何ですか?なぜ大事なのですか?

被せ物が健康な歯を輪のように抱え込む部分のことです。この輪っかがしっかりあるほど被せ物が外れにくく、歯も割れにくくなります。目安は、虫歯などを除いたうえで歯ぐきの上に高さ1.5〜2mm・厚み1mm以上の健康な歯が残っていること。これが足りないときに、歯を引き上げる・歯ぐきを整える治療で確保します。

通院回数はどれくらいかかりますか?

クラウンレングスは検査・施術・抜糸・型取り・セットで、おおむね4回ほど。エクストルージョンはゴム交換のため2〜4週間ごとの通院が必要で、期間は1〜3ヶ月ほどが目安です。精密根管治療は平均2回ほどで神経の治療を終えることを目指します。

保険は使えますか?自費のみですか?

治療内容や使用する材料によって、保険が適用できる場合と自費(自由診療)になる場合があります。保険と自費では、被せ物や土台の精度・持ちに差が出ることもあるため、それぞれの違いをご説明したうえで、ご希望に合わせて選んでいただけます。詳しくは診察時にご確認ください。

治療後、どのくらい歯を長持ちさせられますか?

期間には個人差があり、「必ず何年」とお約束できるものではありません。長持ちするかどうかは、被せ物の適合、かみ合わせ、そして治療後の毎日のケアと定期メンテナンスに大きく左右されます。だからこそ、治療後のフォローを一緒に続けていくことを大切にしています。

知覚過敏(しみる感じ)は治りますか?

歯ぐきを整えると根の面が出るため、一時的にしみることがあります。多くは時間とともに落ち着きますが、続く場合はしみ止めの処置などで対応できますのでご相談ください。

歯ぐきはどれくらい下がりますか?(クラウンレングス)

1〜2mm程度下がることが多く、とくに前歯では見た目に影響することがあります。事前にどの程度変化するかをご説明したうえで進めますので、ご不安な点は遠慮なくお伝えください。

治療中の見た目は大丈夫ですか?

エクストルージョンでは治療中に仮歯を入れるため、日常生活での見た目に大きな支障はありません。会話やお仕事への影響もできるだけ少なくなるよう配慮します。

子育て中や妊娠中でも治療は受けられますか?

クラウンレングスやエクストルージョンの術後も、通常の育児に大きな支障が出ることは多くありません。妊娠中の方は、時期や体調に配慮して治療計画を立てますので、妊娠中であることを事前にお知らせください。麻酔やお薬についても、その方に合わせて慎重に判断します。

他院で「抜くしかない」と言われたのですが、相談だけでも大丈夫ですか?

もちろんです。まずはお口の中とレントゲンを拝見し、残せる可能性があるかどうかを診断します。無理におすすめすることはありません。「もうひとつの選択肢を聞きに来た」という気持ちで、どうぞお気軽にいらしてください。


この記事に出てきた用語の解説

専門的な言葉を、あらためてやさしくまとめました。読み返すときの参考にしてください。

  • クラウンレングス(歯冠長延長術)……歯ぐきや骨の形を外科的に整えて、歯ぐきの上に出ている歯の部分を延ばす治療。別名APF(歯肉弁根尖側移動術)。
  • エクストルージョン(矯正的挺出)……歯にフックを付け、矯正の力でゆっくり引き上げて、歯ぐきの下の健康な歯を上に出す治療。
  • 臨床歯冠(りんしょうしかん)……歯ぐきの上に見えている歯の部分のこと。ここが少ないと被せ物を固定しにくい。
  • 歯肉縁下(しにくえんか)……歯ぐきのふちより下の部分。ここに虫歯や割れが達すると治療が難しくなる。
  • 生物学的幅径(バイオロジックウィズ)……歯ぐきが歯に健康に付着するために必要な、歯ぐきと骨の間のスペース(およそ2〜3mm)。ここを侵すと歯ぐきの炎症が続きやすい。
  • フェルール……被せ物の土台として接する健康な歯のふちの部分。大きく確保できるほど歯が割れにくくなる。
  • 歯根膜(しこんまく)……歯の根と骨をつなぐ薄い組織。噛む力や食感を感じるセンサーの役割を持つ、天然の歯ならではの組織。
  • ブラックトライアングル……歯と歯の間にできる黒い三角形のすき間。歯ぐきが下がると見えやすくなる。
  • 歯冠歯根比(しかんしこんひ)……歯ぐきの上に出ている部分と、骨に支えられた根の部分の長さの比。引き上げすぎるとこの比が悪くなる。
  • ラバーダム防湿……治療する歯だけをゴムのシートで隔離し、だ液や細菌の侵入を防ぐ方法。
  • MTAセメント……生体になじみやすく、根の中を緊密に封鎖できる材料。

まとめ|抜歯と言われても、まずはご相談を

最後に、この記事のポイントを振り返ります。

  • クラウンレングス……奥歯・浅め(2〜3mmまで)・短期間で終えたい方向け。
  • エクストルージョン……前歯や小臼歯・深め(2〜3mm超)・骨を削りたくない方向け。
  • 深い虫歯で神経まで達している歯は、精密根管治療で土台を守ってから残します。
  • どれも、「抜歯」と言われた歯を残せる可能性を高める治療です。
  • 最適な方法は歯の状態で変わるので、まずは診断を受けることが第一歩です。

歯を残せるかどうかを左右する3つのポイント

  1. あきらめる前に、早めに相談する

    虫歯や割れ、感染は時間とともに進みます。「抜くしかない」と言われても、進行する前に相談すれば、残せる選択肢が残っていることがあります。

  2. 歯の状態を正確に診断する

    深さ・位置・残っている根の長さ・割れの範囲を正しく把握することが、最適な方法選びの出発点です。

  3. 治療後のケアを続ける

    残した歯を長く使えるかどうかは、治療後の毎日のケアと定期メンテナンスにかかっています。治療は終わりではなく、その歯と付き合っていくスタートです。

「その歯、本当に抜くしかないのかな」——そう感じたら、答えを出す前に、もう一度だけ相談する機会をつくってみてください。歯を残せるかどうかは、その後の食事も、笑顔も、お口全体の健康も、静かに支えてくれます。すべての歯を必ず残せるわけではありませんが、残せる可能性があるのなら、その道を一緒に探します。他院で抜歯と言われた方こそ、あきらめる前に、どうか一度ご相談ください。

歯を残せるか、一度ご相談ください

他院で抜歯と診断された方も、あきらめる前に。お口の中とレントゲンを確認し、残せる可能性を診断します。

ご相談・ご予約はこちら
監修:巣鴨ヴェリ歯科クリニック
歯科医師 田島圭 日本包括矯正歯科学会理事 豊島区歯科医師会 広報学術理事
所在地:東京都豊島区巣鴨3−25−4 / TEL:03-5980-8787

本記事は治療の一般的な情報を提供するものであり、診断・治療方針は個々の状態により異なります。効果や結果には個人差があります。実際の治療にあたっては歯科医師の診察を受けてください。