こんにちは、ヴェリ歯科クリニック院長の田島です。
8020運動という言葉をご存知でしょうか。
『80歳で20本以上の歯があるように頑張って歯を残しましょう』
という厚生労働省と日本歯科医師会が掲げる健康増進スローガンです。。
歯は歳をとるとともに歯周病や虫歯、噛み合わせからの破折などにより失われていきます。
実は “80歳で20本以上の歯がある方の大半が歯並びが綺麗” というデータがあるのです。
噛み合わせと歯の残存率
8020達成者の歯列咬合(歯の噛み合わせ)の観察をリサーチしたデータがあります。80歳で20本ある方たちを対象にどのような噛み合わせの人が多いのかを調べたものです。
その結果正常な歯並びの方が57%、上顎前突(出っ歯)の方が18%、過蓋咬合(上の歯が下の歯に覆いかぶさっている)が26%、反対咬合や開咬の方が0%というデータが出たのです。
80歳を超えて歯を長く維持できるかどうかは、噛み合わせと密接な関係があるということが分かりますね。
特に開咬(上下の前歯がかみ合っていない)の方と反対咬合(受け口)の方が80歳で20本維持できておらず、長く歯を維持できていないことが分かります。
歯並びは10人10色ではありますが、大きく分けて4つの歯並びがあります。
各々の歯並びにはどのような特徴があるのでしょうか。
歯並び(噛み合わせ)の種類
上顎前突(出っ歯)
上顎前突とは上の歯が下の歯に比べ前に出ている方のことで、上の歯を支える骨(上顎骨)が成長しすぎたり、下の歯を支える骨(下顎骨)が成長しないことでおこります。
原因は遺伝によるもの、幼少期の習癖などが挙げられています。
また噛み合わせも悪く奥歯に負担のかかる噛み方をします。下の顎が小さいタイプの方に多い傾向があります。
過蓋咬合(上の歯が下の歯を覆いかぶさる)
上の歯が下の歯を覆うような噛み方をしています。
英語ではdeepbite(ディープバイト)とも呼ばれ噛み合わせが深い方に多い噛み合わせです。
特徴として上の前歯が下の歯の動きを制限するため下の顎が後方に行きやすいため顎関節が後ろへと圧迫して顎関節症になりやすいタイプです。
また前歯が下の唇を噛みやすく口内炎などにもなりやすいのが特徴です。
反対咬合(受け口)
反対咬合は受け口、しゃくれとも呼ばれ下の顎が上の顎より出ている噛み合わせです。
上の歯を支える骨(上顎骨)が退化していたり、下の歯を支える骨(下顎骨)が成長しすぎている場合に見受けられます。
原因は上顎前突と同じく遺伝や幼少期の習癖です。顎がしっかりしているタイプの方に多く見られ、奥歯に大きい負担がかかります。
開咬(上下の前歯がかみ合っていない)
別名open bite(オープンバイト)とも呼ばれ上下の歯がかみ合っていないタイプの噛み合わせです。
口呼吸の方、舌突出癖のある方に多く見られます。
前歯が噛んでないことで奥歯に負担のかかる噛み合わせです。
特に夜間の歯ぎしりやくいしばりでは正常な噛み合わせの方と比べ2倍ほどの力が歯にかかるという報告もあるほど奥歯にストレスがかかる噛み合わせです。
噛み合わせと歯の寿命
8020歯並びのリサーチで一番多かった噛み合わせは正常歯列、それに続き上顎前突、過蓋咬合。反対咬合や開咬においては見受けられなかったという報告があります。
反対咬合、開咬になく他の噛み合わせに存在する要素として前歯のアンテリアガイダンスや犬歯ガイドが考えられます。
守られる奥歯
アンテリアガイダンスや犬歯ガイドによって奥歯は守られています。
特に人間の生理的な顎の動きは変則的な動きをしますが大抵奥歯は前歯を守り、前歯は奥歯を守るよう作られております。
反対咬合や開咬のタイプの方では前歯がガイドできる位置にあらず的確なアンテリアガイダンスや犬歯ガイドが行えません。
くいしばりや歯ぎしりによって極端に奥歯に大きなストレスがかかりやすく、奥歯の残存率は正常咬合の方よりも劣ってしまうのではないでしょうか。
まとめ
8020運動の中で達成者のなかには受け口や、反対咬合はほぼ皆無でした。
上顎前突や、過蓋咬合は数%いましたが、正常な噛み合わせに越したことはありません。
噛み合わせがよくない状態を不正咬合と呼びます。
不正咬合を改善するためには矯正治療しかありません。
噛み合わせが良くない状況よりも見た目の改善を目的で行う矯正治療ではありますが、歯並びが良くなることで見た目ももちろんの事、実際に噛み合わせが良くなり歯の寿命が延びることは事実なのです。
私も幼少期に矯正治療の経験もありますが、歯並びが良くなったことで虫歯も少なくなった気がします。80歳までの長い目でご自身の歯の重要性や噛み合わせについて知っていただければ将来8020達成者は更新し続けることだろうと思います。