こんにちは、ヴェリ歯科クリニック院長の田島です。
歯が生え始めた頃の赤ちゃんは上下の歯の本数もバラバラな為、顎の噛み合い方や位置が安定していません。
大人でも同じ状態になることがあります。
例えば噛み合わせを考えずに被せ物をした歯が何本もあると、うまく噛み合わない為に顎の位置がずれたり不安定になってしまうのです。
そうならない為に顎の動きを知ることが重要になります。
顎の動きを把握することにより、歯の噛む位置や噛み癖、歯の磨耗具合、歯の病気になりやすいところの特定ができます。
今回は顎の動きが分かる測定法、顎の動きを知る上で知ってほしい最新の治療器具をお話しします。
顎の動きを知る
前回は、顎を動かした際下の前歯が動く軌跡から限界に動かした時の運動路をお話しさせていただいきました。
限界に歯が動く軌跡から歯がどれくらい動いているのか、左右差はないか、どこかにぶつかって邪魔されていないか(干渉)を見つけ、治療に活かしています。
反対に顎を色々な方向へ移動した時の顎関節の動きを表す軌跡もあります。
顎の動きから、一本一本の歯の形態や顎関節症を診断したりもします。
特に顎が動く軌跡に左右差がある場合はどちらかのアゴが顎関節症の可能性が高くなります。
また入れ歯や全体的な被せ物治療で、被せ物を作る時の顎の適正位置を決めるものもあります。
『いつもどこで噛んでいるのかわからない』方や『いつも噛んでいる位置が違う』方によく使用します。
顎を突き出した位置で噛み合わせを作ってもいけないですし、逆にアゴを後ろに入れすぎて噛み合わせを作ってもいけません。
顎の適正な位置を測る機械をゴシックアーチと呼びます。
ゴシックアーチ
PTCdentalより出典
描記板と描記針
ゴシックアーチを簡単に説明しましょう。
口に中にペンとパレットを固定して設置し、アゴを動かしたときのパレットに描くペンの描記図を診ます。この状態でタッピング(軽くカチカチ)させて前に顎を出してもらいます。
その後右、左に顎を移動させていただきます。
ペンになる部分を描記針、パレットになる部分を描記板と呼びます。描記板に描かれる描記針の軌跡は矢印のような図になります。
ptcdentalclinic より出典
①ペンを上の歯や顎に固定しパレットを下の歯や顎に固定する場合と、その逆で②ペンを下にパレットを上にする方法があります。
①のパレットでは矢印が前方向きであり、②のパレットでは矢印が後ろ方向きになります。だいたい矢印の角度は120°と言われています。
上に針を設定しても下に針を設定してもあまり大差はありません。
また口の外で描記針と描記板が設定されているゴシックアーチもあります。
これを口外法、中に描記針と描記板が設定されているのを口内法と呼びます。
口外法の方が口内法の矢印の角度120°よりやや大きくなっていると言われています。
ゴシックアーチで何がわかる?
このゴシックアーチで主にわかるのは顎の水平的な適正位置です。
適正位置を調べるためにタッピングポジションが必要になります。
そして前後左右の顎のポジションがわかります。
タッピングポジション
顎を軽く力を抜きカチカチ噛んだところになります。この時大きく口を開けて行うより口をあまり開かない状態でカチカチしたほうがタッピングポジションは収束します。
顎が緊張してしまう方の場合は手で軽く誘導する場合もあります。
この軽い力でカチカチ噛んで収束したポイントが顎の適正なポジションです。
このポジションが決まったらこのポイントで噛んでいる状態で硬化する材料を流し込み固定します。
ちなみにゴシックアーチで得られる矢印の頂点はタッピングポイントである場合もありますが、そうでない場合もあります。
タッピングポイントはこの頂点よりも前方に存在する場合もあるのです。
左右の顎ポジションの決定
左右偏らない場所に顎が収まるよう、顎のポジションを決定します。
前後的な顎ポジションの決定
前歯を突き出した状態で被せ物や入れ歯を作ると合わないものができますよね。
それを踏まえ矢印の頂点、およびタッピングポイントを診て前後のアゴポジションを決定します。
顎機能が正常かどうかの診断
・ゴシックアーチの猫記図で線が短い
・左右非対称
・複雑な軌跡
・何度行なってもゴシックアーチ猫記図の再現ができない
・痛みが生じる
これらが見つかった場合は顎の機能が正常ではないと診断し、顎関節症の治療が必要になってくることがあります。
まとめ
ゴシックアーチを診察で取り入れる場合、上の歯と下の歯に猫記されます。
この時なるべく猫記針より猫記板が合わさった時の口の開口量を最低限にしたりして
噛み合わせが高い状態でやらないよう注意が必要です。
多くの歯を失っている方か総入れ歯の方の時のみでゴッシクアーチを採用することが多く、歯を多く持っている健常者の歯全体の診断や被せ物を作る場合にはあまり使われていないのが現状ですが、状況や症例によっては是非活用すべき機械でもあります。