こんにちは、ヴェリ歯科クリニック院長の田島です。
突然ですが、「黄金比」というのものをご存知ですか?
縦と横の美しい「比率」とされているものですが、実は、私たちの身近にあるもので黄金比のものがあります。
それはクレジットカード。縦と横の比率が黄金比に成っているのです。
黄金比は世の中のあらゆるものでみられます。
ヒマワリの種などに見られる螺旋構造、レオナルド・ダヴィンチの絵画『最後の晩餐』にも使われたり、ベートーベン、ハイドン、ショパンなどの音楽作品の構成法でも黄金比はよく使われています。
自然界や芸術界、宇宙、幾何学などありとあらゆる場面で見られるある不思議な比率です。
黄金比の歴史は古く、古代エジプトのピラミッドなどにも使われていたようですが、紀元前427年ピタゴラス学派の哲学者であるプラトンはこう言ったのです。
『線分を二つの等しからざる部分に分けよ』
この比率「1:1.6180339…」こそ黄金比であり実はこの数字を利用して前歯の審美治療を行います。
黄金比を人に使うことは昔からよく使われていて、レオナルドダヴィンチは人の体から黄金比により手、胴体、頭の比率を図りデッサンしていました。
歯科でも歯の治療の時に、顔から鼻、目、口の位置に黄金比を利用してその口の位置から前歯を作ることがあります。
きれいな前歯の比率
前歯も黄金比を参考にして前歯の長さや位置を決めることができます。
この図はゴールデンプロポーションと呼ばれ、それぞれの顔のパーツがどこに位置していれば美しく見えるかを表しています。
レオナルドダヴィンチも素描画で顔のパーツを黄金比により顔の枠組み、目、鼻、口の位置を描いています。
このゴールデンプロポーションを使って上前歯の位置や長さを決めると、いわゆる黄金比にかなった審美的な前歯を作ることができます。
顔貌からみる前歯の位置
顔の縦から見た時
- おでこの上部分髪の毛の生え際(前頭面)と下あごの先端との黄金比中線が鼻の下(鼻下点)にあること
- 目尻(顔耳ライン)と上前歯の先端の位置との黄金比中線が鼻の下にあること
- 鼻の下(鼻下点)とあごの先との黄金比中線が上前歯の切端の位置にあること
顔の横から見た時
- 鼻の横幅(両鼻翼):唇の横幅 = 1:1.618
- 唇の横幅 : 両目までの横幅 = 1:2
- 唇の横幅 : 両耳までの横幅 = 1:2
歯の相対的な位置
- 真ん中の前歯の比率
縦のキョリ:真ん中の前歯2本分の横のキョリ = 1 : 1.618 - 顔を正面から見て
真ん中の歯の横幅(中切歯):二番目の前歯の横幅(側切歯):三番目の横幅(犬歯)
= 1.618 : 1 : 0.618
など黄金比により得られる前歯の位置決めがあります。
どうやって黄金比を使って治療するの?
ゴールデンセクションドライバー
これはゴールデンセクションドライバーといって黄金比を図る測定器を使います。
これを使うと必ずメモリとメモリの間が「1:1.618」の比率で測定できますので、これを使って顔の分析をしたり、上前歯の切端を測定して評価したり、仮想の位置を決定したりします。
コイスデントフェイシャルアナライザー
前歯の位置はコイスデントフェイシャルアナライザーという器具で決めていきます。
この器具は、コイス平面と言われている上前歯先端の位置が顆頭(あごの回転軸)から100mmをベースに作られています。
アメリカの歯科医 john kois 先生は黒人でも白人でもアジア人でも男でも女でも80%以上の人があごの回転軸から上前歯の切端とのキョリが100mm±5mmだというデータをもとにこのシステムを開発しました。
以前被せ物や詰め物を作る時に咬合器が必要であると記述しましたが、もちろん前歯を作る際にも咬合器を使います。コイスデントフェイシャルアナライザーは歯を審美的に見せることに特化したいわゆるエステティックマウントと呼ばれる形式で咬合器に上下の歯型をつけます。
先ほどのゴールデンセクションドライバーによって測定された黄金比に適った前歯の位置でコイスデントフェイシャルアナライザーを組み込むと審美的な前歯を作ることが可能になったのです。
またこのシステムは両目のライン(瞳孔線)に平行であり歯の水平的な配列をしやすくしています。
まとめ
審美の黄金比ご理解いただけたでしょうか。
前歯を作る際、もちろん全ての症例が黄金比にの囚われなければいけないということはありません。もともとの噛み合わせの状態、顎のずれ、歯並びや、歯茎の位置などによって必ずしも黄金比を使えばきれいになるとも言い切れません。
しかし、顔に対しての歯の位置を決める為に黄金比は良い参考になるとは思いませんか。
かつてのレオナルドダヴィンチも参考にしていたように、黄金比から割り出す審美的顔のパーツの位置決定。
医療や文明の進歩はありますが、『人や物体を見たときの美しい位置』を追求するのは今も昔も変わらないのですね。