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前歯裏側の形の役割〜アンテリアガイダンス〜

こんにちは、巣鴨ヴェリ歯科クリニック院長の田島です。
テレビを観ていて

『あっ!この人以前と歯が違う。歯並びが変わった。』

など芸能人の歯が変わったことに気づくことってありませんか。出っ歯だったり、八重歯だったり、大きかったり、小さかったり、前歯の形は強くその人を印象付けるものです。

しかし、前歯の裏側を意識したことのある人は少ないのでは?

実は私たち歯科医師は前歯の被せ物を作る時、見える表側と同じ比率で裏側にも留意して被せ物を作っているのです。

アンテリアガイダンス

顎を前にスライドした時に下の前歯がうっすらと上の前歯の裏側を滑走する(当たる)ことをアンテリアガイダンスと言います。

噛み合わせにより当たらない人もいますが、うっすら当たることが理想であり、当たらないのも当たりすぎるのも好ましいとは言えません。

なぜアンテリアガイダンスが必要なのでしょう。これを証明するある実験のデータがあります。

アンテリアガイダンスがある人とアンテリアガイダンスがない人との実験

2グループを対象にして夜寝ている時の顎周りの筋肉の活動データを検証してみました。

すると、アンテリアガイダンスがない人の筋肉は特に嚙みしめる時に使う咬筋と側頭筋の活動量が、アンテリアガイダンスがある人と比べ著しく大きかったのです。。

つまりアンテリアガイダンスがない人の方がある人と比べ夜の食いしばり、歯ぎしりが強いということです。

これにより奥歯に過剰なストレスが生まれ、歯の破折や咬合性外傷(歯の打撲)がおこりやすくなります。

アンテリアガイダンスが強すぎるとどうなるのか。

前歯の当たりを診るのに人差し指の腹の部分を前歯群にあてがい、カチカチ噛んでもらい強くあたる部分を探ります。

これはフレミタスと言われフレミタスを触れるとその歯に過剰な力がかかっていることがわかります。

アンテリアガイダンスが強くなると前歯に負担が蓄積し前歯の靭帯が疲労することで起こる歯根膜炎や、前歯が被せ物だったり神経がなかったりすると破折や被せ物が外れやすくなったりします。

このようにアンテリアガイダンスは適度な強さであることが好ましいのですが、これを意識した被せ物を作るにはどのような手順で作成するのでしょうか。

アンテリアガイダンスの作成手順

  1. まず適正な形態を仮歯で足し算、引き算しながら模索する。(トライアルセラピー
  2. 次は適正な形態が整った仮歯を被せ物に移し替える方法をとる。
  3. 上下の歯型、噛み合わせ記録(バイト)、仮歯が入った時の歯型、フェイスボー、もしくは咬合器へつけるための指標器具(コイスデントフェイシャルアナライザー)を使用する。
  4. 仮歯付きの模型を咬合器につけた後、咬合器のインサイザルピンの受け皿(カスタムインサイザルテーブル)にレジン(歯科用プラスチックの1種)を盛り、固まる直前にインサイザルピン(咬合器の指示棒)を動かして歯の動きを記録。
  5. 軌跡を記録することができたら仮歯付き模型から削った模型に変える。
  6. 歯科技工士(被せ物を作る職人)はカスタムインサイザルテーブルに記録された運動路を参考に被せ物を作る。

前歯の被せ物が外れる原因は様々要因が考えられますが、アンテリアガイダンスが強すぎることも要因の一部ではないでしょうか。また前歯が接触してない方の場合は矯正治療で改善する場合もありますし、裏側だけコンタクトレンズのようなセラミックの板をつける手法もあります。

我々歯科医師が被せ物を作る時や歯を診断する時に指標にする歯の裏側の仕組みでした。