前歯を失ったとき、まず気になるのが
「できるだけ歯を削らず、自然に治したい」
ということだと思います。インプラントやブリッジ以外に選択肢はないのか。

それらに変わる代表的な治療法が 接着ブリッジ です。
しかし実際には、歯科医院で
「あなたには接着ブリッジは向いていません」
「接着だけではすぐ外れてしまう可能性が高いです」
と言われ、不安になってしまう方がたくさんいらっしゃいます。
でも——
接着ブリッジが難しくても、治療の選択肢がなくなったわけではありません。
実は、条件がそろえば
片側ブリッジ(片持ちブリッジ/カンチレバーブリッジ)
という方法が可能なケースがあります。
今日は、その「片側ブリッジができる条件」を、やさしく解説していきます。
目次
1.接着ブリッジとは?
接着ブリッジとは、
歯をほとんど削らずに、失った歯の隣の歯の裏側に薄いパーツを“ぺたっ”と接着するだけで補う治療です。
- 削る量が少ない
- 見た目が自然
- 治療期間が短い
- 価格も比較的おさえられる
などのメリットがあります。
しかし、接着だけで支えるため、
人によっては外れやすかったり、負担に耐えられないことがあります。
2.接着ブリッジが難しいと言われる理由
接着ブリッジが使いにくいケースには、いくつか特徴があります。
歯の裏側の面積が小さい
→ パーツを安定して接着する土台が足りない
噛む力が強い
→ 接着だけでは負担に耐えられなくなることがある
真ん中の歯(中切歯)など、力がかかりやすい位置にある欠損
→ 前歯は横からの力も強く、接着を不安定にさせる場合がある
これらの理由で、接着ブリッジが向かないと言われることがあります。
でも、ここで諦める必要はありません。
3.片側ブリッジ(片持ちブリッジ/1本ブリッジ)とは?

接着ブリッジが難しい場合でも、
片側ブリッジ という選択肢があります。
片側ブリッジとは、
- 片持ちブリッジ
- カンチレバーブリッジ
- 一本ブリッジ
- 単支台ブリッジ
などとも呼ばれ、
下の写真は右上の矮小している歯にほぼ削らずに片側ブリッジを入れました。噛み合わせも強くなく見た目も機能も問題なく使えており治療後現在5年ほどですが特に一度も外れておりません。

失った歯の隣の歯をしっかり被せ物(クラウン)にして、そこから“歯のない部分”をそっと延ばすように作るブリッジです。歯がない部分に置かれる人工の歯をポンティック(=歯がないところに置く人工歯)
といいます。
ふつうブリッジは“両側の歯”で支えますが、
片側ブリッジは“片側だけ”で支えるため、
「そんなの大丈夫なの?」
と思われるかもしれません。
実は、条件さえそろえば安定して長く使える場合があります。
4.すべての方が片側ブリッジを使えるわけではありません(理由)
一般的に片側ブリッジの適応は
上の前から2番目の歯(側切歯)を失ったときは、3番目の歯(犬歯)を削ってで支えるのが一番安定する
というのが歯科の基本ルールです。
犬歯は
- 根がしっかりしている
- 横からの力に強い
ため、片側ブリッジの支台として理想的です。
一方で
真ん中の歯(中切歯)は根が細く、横揺れに弱いため、
片側ブリッジの支えとしては一般に難しいとされています。
そのため多くの医院では
「中切歯を支台にした片側ブリッジはできません」
と説明されるわけです。
しかし、これはあくまで
「平均的な条件の人の場合」の話。
実は、“例外的にとても安定するケース” が存在します。
5.では、どんな人なら片側ブリッジが可能?
片側ブリッジが成立する条件とは!**
ここからが大切なポイントです。
接着ブリッジが難しいと言われた方でも、
次の条件が揃っていれば、片側ブリッジがうまくいく可能性があります。
① オープンバイト(前歯が噛み合っていない人)
オープンバイトの方は、
前歯にほとんど噛む力が加わらないため、
片側ブリッジとの相性が非常に良いのです。
- 前歯が軽くしか触れない
- 横方向の力がかかりにくい
この2つがそろうと、ブリッジの負担が大幅に減ります。
② 支台になる歯が“生活歯”(神経が残っている歯)であること
神経がある生活歯は、
- 折れにくい
- 過度な負荷がかかると感覚が働いて守ってくれる
ため、片側ブリッジの土台としてとても優秀です。現在は歯の外周を0.7mmほどりんごの皮を剥くほどの削除量で差し歯ができるので昔ほどたくさん歯を削らずに治療が行えます。
③ 根が太く、歯周組織が健康な歯であること
真ん中の歯(中切歯)でも、
個人差で 根が太いタイプ の方がいます。
こうしたタイプの歯は、
片側ブリッジの支点として十分耐えられます。
④ 歯のない部分の幅が小さい(アームが短い)
「アームが短い」とは、
歯がない部分の横幅が小さいことを意味します。
前歯の欠損は距離が短いので、
てこの力が弱くなり、ブリッジが安定しやすいのです。
⑤ 噛み合わせを適切に調整できること
- 側方(横方向)の力を当てない
- 前にずらしたときにポンティックが当たらない
- 普段の噛み合わせも軽く調整する
これによって負担はさらに軽くなります。
片側ブリッジという治療法
接着ブリッジが難しいと言われると、
「インプラントしかないのかな…」
「もう抜けたままなのかな…」
と不安になる方が多いです。
しかし、そうではありません。
条件さえ合えば、
片側ブリッジがきちんと成立するケースは確実に存在します。
もちろんすべての方に適応できるわけではありませんが、
「あなたの歯の形」「噛み合わせ」「歯ぐきの健康状態」などを丁寧に分析することで、
安全に、かつ自然な形で前歯を補うことが可能です。