歯を抜きたくない方、歯の神経をとりたくない方にはMTAセメントを使います

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こんにちは、ヴェリ歯科クリニック院長の田島です。

現在、歯科治療では画期的に歯を温存できる薬が開発されていることをご存知でしょうか。

この薬をMTAセメントといい、抜歯になる歯を残せたり、神経を残せる歯科用補修セメントとして広く歯科医院で使われています。

今回はMTAセメントの最新トピックについてお話ししたいと思います。(2017年2月)

MTAセメント

(mineral trioxide aggregate cement)

MTAセメントは水で固まるセメントで、主成分は酸化カルシウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウムなどにレントゲンに映れるよう二酸化ビスマスを配合したセメントです。

これらは俗にポルトランドセメントと言われていて工業用セメントと同じ成分が入っています。MTAセメントは歯科用としてしっかり抗菌処理などをされて工場で製作されているので、成分は同じですが用途は異なります。

MTAセメントがなぜ歯科界で画期的になったかというと以下の3つが挙げられます。

①殺菌効果がある

MTAセメントは強アルカリ性のため、組織の中に入ると強い殺菌効果が働きます。周囲の菌を死滅させ、セメントの周りの細菌の増殖を抑えます。

②水分で固まり膨張する

歯科医師側からするとこれが一番革新的なことになります。私たち歯科医師にとって天敵は水分なのです。

私たちが薬剤や、セメントを歯に付けるときに歯が唾液や血液に触れてしまうと接着率が落ちたり、感染してしまったりとあらゆる問題を引き起こします。

そのため極力歯に水分(唾液や血液)が触れないように乾燥工程には十分気を使っています。

根管治療(神経の治療)の分野に於いても、根管内に水分が入らないようにラバーダム装置をつけたり、ペーパーポイントを使って根管内の水分のゼロ化を徹底しています。

しかし常に組織液に存在している部位においては水分のゼロ化は不可能に近く、従来の治療法では予後が悪かったのです。

ここでいう組織液に常に満たされている場所とはのちに話す、パーフォレーションリペアと逆根管充填のことを指します。

MTAセメントは水分を吸収して硬化するので、根管内や歯に水分があっても問題にならないことはとても画期的なことです。

またさらにMTAセメントは固まると膨張するため、虫歯菌などの細菌の感染経路がしっかり遮断されます。これにより再感染率が極力抑えられます。

③体には害がない

MTAセメントと似たような殺菌性の薬に水酸化カルシウム製剤があります。この水酸化カルシウム製剤を組織外に作用させてしまった場合(神経の治療で根尖孔外に薬剤が出た場合)、患者様は痛みを発生したりその組織が回復するのに時間がかかります。

MTAセメントは水酸化カルシウム製剤のように組織を侵すようなことはなく組織外に露出しても無害な薬剤です。

MTAセメントの使い方

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MTAセメントは国内で認可されている治療法は一つだけなのですが、アメリカ、ヨーロッパも含めて国際標準のMTAセメントの治療法をご紹介します。

①歯の神経を守る為の薬として

虫歯の治療で歯を削りますが、無事虫歯を全て取り除いたと思いきや、『あれ?ピンク色の点が見えるぞ!』とこんなシーンがあります。

点状露髄といい、虫歯が深かったため神経の一部が露出してしまった時に見られます。

こんな時は神経を取らざをえなかったのですがMTAセメントを塗りこむことで、神経を取らずに歯を治療できる場合があります。

(個人差があります。)

歯の神経を守るためにMTAセメントを使うことを『覆とう』といい、直接覆とう材としての認可が日本でおりてます。

②歯にできた穴を補修する為のセメントとして

歯、歯の内部(根管)にできた穴のことをパーフォレーションと言います。

従来ではスーパーボンドと呼ばれる歯科用接着剤が使われていました。接着剤は水が天敵です。

水を含ませたスポンジに接着剤がつかないようにパーフォレーション内部の組織液によってスーパーボンドはあまりうまくくっついていませんでした。

MTAセメントではこの組織液や血液があっても問題なく吸水し固まります。固まった後は膨張することでより確実にパーフォレーション部を封鎖してくれます。

根管治療についてはこちら

③難しい歯の神経の治療の為の充填材として

何度も神経の治療を繰り返すと歯の根の先端が破壊され治療を難しくさせます。

通常、根管充填(神経に充填材を入れる作業)にはガッタパーチャポイントが使われますが、根尖が破壊された歯の充填材にガッタパーチャポイントを使ってもうまく封鎖できず、再発してしまうことがありました。

MTAセメントは破壊された根尖を埋めてしっかり封鎖することができます。

④歯の神経の病気を外科的に治療するための封鎖材として

神経の治療がうまくいかない場合、最終的な方法として歯茎の外から根を治療する方法があります。

逆根管充填とも呼ばれ根の先端の方に薬を充填します。従来ではEBAセメント、アマルガム、スーパーボンドなどが使われていましたがどれも一長一短がありました。

現在、全世界の多くの根管治療医はMTAセメントでの充填をしており、大変予後のいい結果になっています。

MTAセメントとドックベストセメントの違い

MTAセメントの治療条件として虫歯を完全に除去できているのが条件です。対してドックベストセメントは虫歯を残した状態でセメントを使用します。

MTAセメントは歯に虫歯がなくなってさえいれば非常に予後がいい薬剤として、日本の薬事も認可しています。ただし直接覆とうが必ずしもうまくいくわけではありません。

それぞれが一長一短といったところでしょうか。

虫歯が完全に取りきれてない段階でのMTAセメントはNGなので、その場合はドックベストセメントを検討してみるのいいのではないでしょうか。

ドックベストセメントについて詳しくはこちら

最新のMTAセメントの紹介

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今までのMTAセメントの最大の欠点はその操作性です。

水と粉を混ぜて専用の器具にとり使用するのですが、問題点として水と粉の比率によってボソボソしたり、シャバシャバになったりします。

またそのような不安定なMTAセメントをしっかり歯の場所に操作できるようになるには技術が必要になります。所々にスペースや気泡ができていたり、作用させたいところに十分に運べられない場合もあります。

ペントロン社のプレミックス(あらかじめMTAセメントが作られている)エンドセム MTAによって以下のような利点が挙げられます。

①理想的な混水比でMTAの作用を十分に作用させる。

②粘性があるので組織に停滞できる。細かいところまで入りやすい。

③早硬性(12分)があり酸素と触れると固まります。

このプレミックスは通常根管充填の時に使うシーラー(充填剤)のような粘性なので操作が格段にしやすくなりました。

まとめ

MTAセメントの出現で、歯を残せるようになった方は多いと思います。これからも新しい材料が出ることで私たちの歯の寿命が延びてくることでしょう。

MTAセメントは万能な治療剤ではないのでご自身の歯に検討している場合は、歯科医師の方とよく相談してみてください。