こんにちは、ヴェリ歯科クリニック院長の田島です。
噛んだ時に違和感を感じたことはありますか?
歯医者さんで噛み合わせを指摘されたことはありませんか。
噛んだ時、その位置が正しいか正しくないかなんて分かりませんよね。
その噛み合わせの位置が合っているかどうかのお話をしたいと思います。
まず正しいあごの位置とはどういう事でしょう。
正しい顎の位置とは
ゆっくりリラックスした状態で噛んだ時に、顎関節が適正な位置にあるときが正しい位置になります。
耳に手を当てて口を大きく開けてみてください。
耳の前方で何か凹むところがありませんか。ここが顎関節になります。
下の顎の骨と受け皿である頭の骨の結合しているところで、下の顎の骨の一部コンダイルとその受け皿の関節窩と呼ばれる部分から構成されます。
関節窩とコンダイルは関節円板と言われる軟骨を介して動いています。
顎関節が適正な位置にあるとはつまり、上下の歯が噛んだ時の関節窩とコンダイルの位置が適正かという事です。
このポジションは、噛み合わせの研究の中で様々な論議がありましたが、現在一つの見解でまとまりつつあります。
理想的な位置はコンダイルが関節窩の前上方にある事であると言われています。
その位置が微妙にずれていると様々な症状が現れる事もあります。
例えば関節窩の奥にある場合、関節窩の後方には神経の束や血管が密集していますので顎が痛くなったり、耳鳴りなどの痛みが伴うこともあるのです。
顎の位置が正しいかどうかチェックしてみましょう
- 今噛みやすいところでぎゅっと噛んでみてください。
この噛みやすいところで噛んだ位置のことを中心咬合位と言います。(CO) - そして顎をリラックスした状態でゆっくりと口を閉じてください。
このリラックスして顎が閉じた状態のことを中心位と言います。(CR)
理想的なのは中心咬合位と中心位(CO=CR)が同一であることなのですが、このような方はめったにいません。
多少なりとも誤差がありますが、ここで着目したいことは中心位と中心咬合位を顎関節でフォーカスした時にコンダイルの位置が1mm以上かけ離れていれば病的な噛み合わせになります。
適正な顎の位置で噛んでいないケース
1. 歯をたくさん治療して適正な位置で被せ物が作られていないケース
被せ物を作る時に型取りをして噛み合わせの記録をとり被せ物を製作します。
噛み合わせに合わせて製作物を作れればいいのですが、その過程において少しずれた被せ物を作っていた場合、最初は違和感を覚えますが使っているうちに下の顎は慣れてしまいます。
このような治療を2歯、3歯と続けてるうちに知らず知らずのうちに顎がずれてきます。
2. 虫歯で多くの歯が崩壊しているケース
虫歯の崩壊が大きくなるとその歯で噛むことができなくなり、虫歯ではない残存している健康な歯で噛みあうようになります。
すると噛むポイントが少なり、少なくなるほどに顎の位置が変わってきてしまいます。
3. 歯周病によって歯がぐらついてたり、傾いていたりするケース
噛んだ時に歯が動く程に進行した歯周病の歯が多くなると、しっかり噛んだ時の定位置が不安定になり顎の位置がずれてしまいます。
4. 歯ぎしりによって歯の大部分が変形しているケース
歯は山と谷の構造で出来ていて、上下の歯がその山と谷で噛み合っています。
歯ぎしりが多くなると歯の山と谷がすり減り、フラットな形に変わってきます。
フラットな形の歯は噛む位置の定点が定まらずに噛むことになります。
あごは定位置、関節窩におけるコンダイルの位置が定まらなくなる事で、常に筋肉が緊張している状態になります。
5. 歯並びが悪くて噛んでいる歯が少ないケース
いつの間にか歯が前に出てしまったり、凸凹になったり、伸びたり、あるいは生まれつき歯が生えてくる位置が悪く、しっかり噛んでいる歯が少ない場合があります。
歯並びが悪くなるとしっかり噛むところが少なくなります。
少ない歯の中で嚙めるところで噛んでいる為、その位置は正しいとは言い切れません。
普段噛んでる位置が正しい位置でない場合自ずと顎関節や筋肉、歯などに様々な症状が出てきます。
顎の位置が悪いと将来どうなる?
1. 歯への影響
奥歯には奥歯、前歯には前歯、中間の歯には中間の歯。各々の歯には外部からストレスが与えられてもそれに耐えられる力があります。
しかし適正な位置で噛まない場合、耐えられる範囲を超えた力がかかってしまいます。
その影響で、歯が移動してしまう、神経が炎症を受けて痛みが出る、破折、また虫歯になりやすくなるなどの症状が出てくるとの報告もされています。
2. 顎への影響
先述したように、正しい位置で顎関節が存在するとはコンダイルが前上方にある場合をいいます。しかし間違った位置にある場合には耳鳴りや顎に痛みなどの症状が出てきます。
3. 歯の周りの組織への影響
歯に過剰なストレスが加わると、歯だけでなくその周りの組織にも影響が出ます。
特に歯の周囲を守ってくれる歯茎に炎症が起きます。
さらにそれが続くと支えている骨も溶けてしますのです。
4. 筋肉への影響
顎の定位置が定まっていないとその周りの筋肉によって顎の位置は補正されます。
常に筋肉が過緊張の状態になっている為痛みが出たり、凝り固まってしまいます。
さらに顎だけにとどまらず首、肩、背中の筋肉にも影響を及ぼすこともあります。
あごの位置を適正な位置で治療する方法
あごを適正な位置にする為に、特に何もしなくていい程度から大きく調整しなくてはいけない程度までケースは様々ですが、噛み合わせの治療の主な3方法をご紹介します。
1. 中心位で行う咬合リニューアル
顎の筋肉に慢性的な筋肉の張りや痛みがない場合、リラックスの状態でゆっくり顎を閉じた時の噛み合わせ(中心位)を記録します。診断を精密に行い、詰め物や被せ物を変えたり、削って調整することになります。
2. 矯正治療
長期間にわたる1.の咬合リニューアルになります。
各々の歯を噛み合わせ上、適正な位置に移動させることによって改善する方法です。
1.の方法と比較すると、歯を削ったり被せ物をしたりしなくて済みますが、矯正装置を長期間歯につけなくてはならない点がデメリットです。
3. オクルーザルアプライアンス
1. や2. は大きく噛み合わせを調整しなくてはいけない方法です。
これらの方法は一つ、二つの詰め物を変えるだけでは改善できません。
顎の位置がずれている方でもそれが体に許容できている方、そして症状が初期の方、痛みが出ている急性症状の方、予防的に考えている方たちは、まずリラックスした位置で噛んだ顎のマウスピースを作り、まずは顎に定位置を覚えさせることで改善する方法をお勧めします。
人によって使用方法、頻度は異なります。
短期間でだけ着用、夜間だけの利用、日中も使用する方もいます。
使用する方法はその方により違いますので、詳しくは歯医者さんに聞いてみてください。
4. これらをミックスした方法
治療法は一つだけではありません。1. と3. を利用する方、1. 2. 3. 全て取り入れる方など、症状や噛み合わせによって異なります。
まとめ
『顎に慢性的に違和感がある』『噛みにくい』
など何かしらの症状がある方やご自身の噛み合わせに疑問がある方。一度噛み合わせの診断をされることをお勧めします。